杜の響き  


 「杜の響き」
メッセージ 第76章

   子曰く

    コロナ禍で活力低下の世相ですが、冬季にも拘わらず珍しく日中の最高気温15℃と
   なる穏やかな日があり、氏子さんの祈願神事を済ませ竣工間もない庭園「鄰德苑」に佇
   んで沈思黙考の一時を得ました。

    庭園上手の築山にある注連縄を祀った源石の間隙より音もなく滲み出る湧水は、岩組
   を経由して凡そ30m白砂を敷き詰めた排水池に注がれます。晴天時は浸透乃至蒸発に
   より排水口に至る水量は僅かですが、雨後の痕跡から排水池周りの庭石の隙間にかなり
   多量の流水が推定されます。幅員の広い排水口付近で集水後は更に下水管を経由して近
   くを流れる天神川に注がれます。この様に物理的目的である境内の降雨対策の効果は確
   認されています。

    源から湧き出た一筋の水流が極微ながらやがて生命の源となる大海に加わるのです。
   一介の德にも多くの隣人により德に満ちた心豊かな世が形成されます。

    主要なのは齋苑の氏子の皆様に対する感覚的伝播であり、構築場所が社務所の背面で
   あるため状況把握を意図して、年初に入り現地に鄰徳苑に係る趣意書のチラシ70部を
   配置しました。その結果数日で全て無くなったことからも、多くの参詣者の方々が関心
   を抱かれたことが裏付けられ安堵しました。

    中には、鄰徳に係る象形文字の意義や中国に存在する石碑などを認めた方々もあり、
   論語「德不孤、必有鄰」を縁に孔子に造詣の人の多さに感嘆しています。

    人生の晩節を迎え2500年以上遡る「子曰く」を繙きながら、「論語読みの論語し
   らず」を少しでも解消すべく緩慢な身体と認識のうえ、訥言敏行の精神に努めたく思い
   ます。


    令和3年2月1日

   「 杜の響き 第76章 」
澁川神社 責任役員 森下千晴 記

                

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