杜の響き  
「杜の響き」メッセージ 第74章

  コロナ禍の移ろい

 の候を経て神社境内では関係者一同連日落葉の処理に追われています。例年に較べ樹種による色付き時期に差異が見られ、特に樫の葉が大きくこころ做しか箒の先でも感じられます。降雨と気温など年毎に影響度が異なる故と門外漢なりに解釈しています。
 例年訪れる四季の移ろいに農耕民族の日本人は古来より暦に深い関心を抱き、季語を定め種蒔きから収穫までの日程を作成していました。自然の恵みに神恩感謝を込めた祭神事が営まれる由来でもあります。
 子供心に同じ太陽からの恩恵でありながら春夏秋冬の存在に疑問を感じ、地球の地軸と自転公転による周期的気象変動と教わり其の儘年を重ねてきました。今は気象情報の報道を通じ、背景に世界の気象データ、人工衛星、AIによるスーパーコンピューター解析も加わり未来の地球環境の変動まで予測する有様で、素人の知識では遠く及ばぬ分野になっています。
 科学者の果てしない探求心の表れと敬意を感じながら、僭越ですが現在地球規模の災禍となっている新型コロナウイルスに当て嵌めて座視してみました。
 連日の報道によればこの感染症は年初から一次~三次のピークがあり、また世界頻度でも国別により大きく異なり、環境や生活習慣等など想定される立地条件などを加味すると変動要素は無数に存在します。
 また、ウイルスは40数億年前の地球創成期以来存続していて哺乳類へ影響する種類でも数百種あり全体では恐らく万のオーダーだと言われており、専門家の唱えるウイズウイルス説も理解できます。清純な身体で誕生する乳児が何時しか様々な状況に囲まれ免疫細胞を得て、各種の病魔に抗する体に成長することに神秘性すら感じます。
 現代科学は人工的に免疫ワクチンの開発を試みられ新型コロナでも急ピッチで製品化が進み、一部では開発後の臨床実験に移行している知らせもあります。
 新型コロナの感染でもやがて多次元分野での疫学的調査データを基に富岳などスーパーコンピューターを活用したマトリックス解析により、生体の経路や影響が解き明かされ今後この種の感染防止の即応体制が確立されることを期待しています。
 干ばつや風水害の根源も理解できず神頼みした時代の万葉集に「春は萌え夏は緑に紅の綵色(まだら)に見ゆる秋の山かも」(2177)と四季の移ろいを詠んだ和歌があり、自然環境を愛でる心情の先に神恩の心が映ります。人々は科学的知見のない現象に神の司る時空を創造しながら人知の及ばぬ苦難の解消に役立てています。


 令和2年12月13日

「 杜の響き 第74章 」
澁川神社 責任役員 森下千晴 記

                

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