杜の響き  

     
              「杜の響き」
メッセージ 第70章
    
                                             


     鄰 德 苑

                  令和2年 8月 2日

     

      

      今夏は、例年に無い長梅雨により日本列島は豪雨に見舞われ、各所で洪水が発生
     、中には水害が繰り返され未だ復旧に手付かずの地域もあり、被災の方々には衷心
     よりお見舞い申し上げます。

      降雨は、水と言う人間を始め生物の命の源を地球環境に齎す自然界の循環手段で
     重要な役割を果たしています。一方では渇水、干ばつに苦悩する地域や時期も存在
     します。人類は自然界に順応した生活形態の中で文化的な社会の構築を目指して歴
     史を刻んでいます。その為先人たちは何時の時代も治水利水を基本に集落開発と河
     川制御に腐心して来ました。

      弊社の鎮座地は、古墳時代の集落に始まり農耕民族の定着により稲作の田園地帯
     でした。周辺には河川と丘陵地があり、名称澁川の由来(蘇父河が訛り澁川)に起
     因したソブ水が湧き、随所で自噴井戸を整備して生活水や農耕に利用していまし
     た。現在は上下水道も整備され、周辺の環境は一変し歴史上の天武天皇悠紀齋田跡
     も都市化により変貌しています。

      都市化と相俟って社殿を再建した境内には、湧水池跡と思しき一画に湿地帯があ
     り、特に降雨後はソブ水が滲み参詣者にご迷惑をお掛けする状況にあります。

      この度、同個所に改元令和を記念した細やかな庭園を創設することとしました。
     雨水、湧水に逆らう事無く諸々の神木にも高配した構造で、人々が集い德の精神を
     培う一助になればと念じています。

      庭園の名称は「鄰德苑」とします。弊社関係者一同が訓詁とする論語の里仁第四
     「德不孤、必有鄰」(德を重ねる人は決して孤独ではない、その人を慕って人が集
     まってくる。)に因んだ引用語です。地域の氏子の皆さんが集い、労わり、徳を尊
     び互いの絆を醸成すると共に、御祭神「高皇産霊神」のご神德を得て、先に完成し
     た「清流苑」と併せ親しみ心豊かな地域社会の更なる発展の拠点になればと祈念し
     ています。

     注:ソブ水

      水中のバクテリアが炭酸ガスから炭素を吸収し発生したエネルギーで溶融の鉄分
     を周囲の酸素と化合させることにより赤褐色の水酸化第二鉄(鉄錆)を生成し赤水
     泥の沈殿物となります。当地ではソブ水と呼称されています。

                  

                   令和2年 8月 2日

                    「 杜の響き 第70章 」
                澁川神社 責任役員 森下千晴 記

                        


                杜の響きへ続く   神社INDEX