杜の響き  

     
                 「杜の響き」
メッセージ 第66章
    
                                             
                  詩・礼・樂

                    令和2年 4月 1日
                   
       神社再建に合わせ雅楽の復活を目指して11余年が経過致しました。
      全くの素人集団で伶人会と称して、40~70歳代で楽器習得適齢期を遙かに
     超えた身体を鼓舞して努力を重ねてきました。著しい演奏技術の向上を覚える事
     無く、唯継続は力なりの一念で今日に至っています。
      この度、突然、存じ上げない遠隔地の女性よりお便りを頂き、当伶人会の存在
     意義を再認識する契機となりました。
      通常、弊社神事に添えて奏でる雅楽は、修祓前「音取り」、献饌「五常楽急」
     巫女舞「浦安」、玉串奉奠「越天楽・陪臚」、撤饌「皇麞急」で何れも洋樂風の
     楽譜は無く、歌唱が基本の口伝承です。
      雅楽に用いる楽器の発祥地は不明ですが、少なくとも二千数百年遡る孔子の時
     代には、管・弦・打共に可成り発達普及していたと推測されています。
      論語泰伯第八には「興於、立於、成於」と、人生観に音楽の成就を加え
    ています。狭義ですが神事に当て嵌め解釈させて頂きました。
     詩を祝詞に置換えれば、神恩・祈願等の感情を以って神官に託す事になります。
     礼は、所作及び供物・幣帛等の形式を以って行動します。そして雅楽の役割は
    神事全体の典儀の背景を司ることと相成ります。
     更に、陽貨第十七に「礼云礼云、玉帛云乎哉。楽云樂云、鍾鼓云乎哉」とあり、
    礼だ、礼だと言って玉帛など礼物の使い方ではなく、音楽だ、音楽だと言って鐘・
    鼓など楽器の奏で方では無い、と諭しています。技能に偏らず心を重視した精神の
    養成が肝要と理解されます。
     論語に述べられる礼樂の意義は、本来広汎で然も重厚な人生の道標として社会的
    規範の礎と理解したうえで、適応させて頂きました。
     神社で奏する雅楽は、聴衆相手のコンサートと異なり、例大祭を始め伝統行事の
    典儀に位置づけされており、他に初宮、七五三、厄除け、結婚式、各種祈願に伴い
    祭文殿、拝殿で奏でられますが、参詣者の意を酌んだ演奏に心掛けています。
     神事外で、舞楽など参会者相手に演奏される場合は、多岐の奏法が求められ奏者
    の個性、技量などによる芸術性が発揮されます。
     概ね 敬虔な感情であれば、格調高く、明瞭に。
        歓びの感情であれば、広く、高らかに響かせ。
        怒りの感情であれば、荒々しく、粗野に。
        楽しい感情であれば、緩やかに、散策気分で
        悲哀の感情であれば、か細く、粛々と。
     と考えます。   
     雅楽曲は、悠久の歴史のなかで数多の作品が製作、淘汰を繰り返えたことと想い
    つつ、微力ながら次世代への継承に努めて参ります。  



                   令和2年 4月 1日 

                    「 杜の響き 第66章 」
                澁川神社 責任役員 森下千晴 記

                        


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