杜の響き  

     
                  「杜の響き」
メッセージ 第65章

                宇宙を司る神
                      令和2年 3月 1日
                   
         この度の建国記念日にフランス人の芸術家マークエステル画伯が、多数の仲
        間と共に幣神社を参拝され、自らの油彩画作品を奉納されました。
         画伯は、京都清水寺所蔵の掛軸に描かれた水墨画を鑑賞して、滲む墨の神秘
        性に魅せられ外交官の職を辞して画家に専心されました。
         以降は古事記を読破して日本神話に興味を抱き、日本国内を中心に芸術の創
        作活動に励んでおられます。
         滲みを多用した油彩で神話に基づく神々の描写は、日本の伝統文化と西欧文
        化の融和が感じられます。会話の中からも日本神話に深い理解が感じられ、誇
        りある日本の精神文化を内外に伝播継承する意図が伺えました。
         画題は「宇宙を司る高皇産霊神」とあり、異界に賜る大神が柔和な眼差しで
        深淵な宇宙を見守る様子が描写されています。
         この霊神は、古事記の始めに登場する独り神三柱に位置づけられ、弊社では
        御祭神として祀られています。絵心を持ち合わせていない小生にも、芸術の重
        厚な表現力が感じ取れます。伝聞する他の作品から内在する芸術の背景を垣間
        見ると、大作の日本神話を題材とした神々のシリーズに日本人の人生観に加え
        宇宙に拡がる幽玄の世界へ誘われます。
         既に同画伯の絵画は、伊勢神宮、橿原神宮を始め全国の神宮及び大社に奉納
        されています。今回の奉納に深く感謝すると共に神社宝として、氏子の皆様と
        継承したく存じます。正式参拝で奉奏した雅楽には客演の八雲琴も加わり、弊
        社の記念すべき祭事となりました。地方の氏神神社でありながらも、後世にフ
        ランスとの絆が語られる機会が到来すると確信しています。
         奉納頂いた絵画を鑑賞しながら、天地創造の根源に限界はなく永遠な想像の
        世界であって、例え高次元の科学が挑戦する領域に拡げようとも、それに準拠
        して、更に遠のき無限に続く宇宙が想像され、奥深い神恩を感じます。
         日本人の心には、自然物や自然現象を司る神々に端を発して衣食住の糧を得
        て謝意を表する神など、八百万を崇める精神が、社会的規範とし根付いていま
        す。


                       令和2年 3月 1日 

                        「 杜の響き 第65章 」
                     澁川神社 責任役員 森下千晴 記

                        


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