杜の響き  

     
                 「杜の響き」
メッセージ 第58章
                         
               鎮守の森(植樹祭を顧みて) 

                         
      令和元年第70回全国植樹祭が天皇陛下ご臨席の下、当地県立森林公園で厳かな雰囲
      気の中、盛大に挙行されました。
       令和への御代替わり後、初の天皇皇后両陛下お揃いの国内行幸と相成り、愛知県では
      前日來慶賀に包まれました。
       県民挙げての行事として位置づけて、約一年前からシンボルの木製地球儀を愛知県内
      市町村にリレー展示するなど、準備を怠る事無く尾張旭市を主会場にメインイベントの
      6月2日を迎えました。

       初回植樹祭は昭和25年に遡ると言われ第二次世界大戦で荒廃した国土の復興を目指
      した企画でした。翌26年には対戦国との平和条約が締結され日本国の主権が認められ
     た 時期でもあり、平和国家建設の黎明期と受け止めています。
       今回メイン会場に選定された森林公園は、昭和9年に開園されたものの戦中戦後には
      燃料用に樹木が伐採されため禿山が点在する有り様でしたが、戦後の行政による指定管
      理の下見事に整備され、知事の先見の明もあって当時の庶民感覚では及ばぬ36ホール
      のパブリックゴルフ場まで設置されました。      

       毎年天皇陛下のご臨席で開催される植樹祭は、後発の豊かな海つくり大会とともに国
      民が自然環境の保持育成を再認識する機会となっています。
       日本は文明国の中でも特に森に恵まれた国土であり、日常生活に浸透した風土を背景
      に国民は美しく豊かな森を後世に残す意識を自然に体得しています。中でも古神道は発
      祥源に神籬(ひもろぎ)信仰があり、自然界の恵みに感謝し富士山御嶽山などの山々を
      霊峰と崇め、また身近な大木、大石、滝にも永代の存在に敬意を抱き人智の及ばぬ霊魂
      を意識することになり、祠や注連縄を設けたりして、互いに伝達して連帯感を醸し出す
      多くの場所が派生しました。  

       やがて、自然崇拝と精霊崇拝に立脚した神社神道が形成されると、御神体の山などが
      存在しない集落に設けられた社殿では、常世(とこよ)と現世(うつしよ)の端境とし
      て鎮守の森を創り神聖な領域を確保すると共にまた時として神木や霊石を定めたりして
      神々を人々に認知定着させたと推測されます。

       神社が崇敬場所として確立されるとその歴史と共に各種の逸話を得て存在感も増し、
      こころの拠り所となって、次世代へと順次継承されてきました。
      弊社も古絵で社叢林、街道木の生い茂る様子が見られるが、今は都市化による周囲の
      環境変化と自然災害が相俟って、境内規模も縮小し動植物の生態系も著しく異なってい
      ます。

       古代より森林に恵まれた環境の中で文明を発展させた日本人の気質を大切に、時代に
      即した社叢林の存在価値を求め境内の整備に当たって参ります。
       鎮守の森に囲まれた神社境内が崇敬者の皆様にとって憩いと癒しの場となり、更には
      絆の醸成に寄与出来れば幸甚に存じます。


                     令和元年 8月 1日 

                      「 杜の響き 第58章 」
                  澁川神社責任役員 森下千晴 記

                        


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