杜の響き  
         「杜の響き」 メッセージ 第54章


       初春令月、氣淑風和(改元)


    天皇の譲位に伴う新たな元号「令和」が発表されました。古今東西で時代を背景に多種
   の年号が制定されていますが、日本の元号のように、永く国民に浸透し使用されているも
   のは他に類を見ないと言われます。
    出典が万葉集巻五梅花の歌三十二首の序にある天平二年正月十三日師老(大伴旅人)宅で
   の宴会を描写した散文的な詩編からの引用と紹介されました。

    「初春の令月にして、氣淑く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす」
   とあり、春の訪れを愛でると共に白梅を美女の白粉にまた蘭は装いに例えています。続い
   ての記述では、山嶺、雲、松、霧、鳥、蝶、雁、など自然を背景にした雅な宴で、胸襟を
   ひらいて祝杯を交わす仲間に迎春を共有して梅花を賦した和歌を詠じるよう促しています。
    この梅花に係る和歌の事例紹介に「万代に年は来経とも梅の花絶ゆることなく咲き渡る
   べし」と、人生観を説いた一首もあります。

    奈良時代には、遣唐使などの影響もあり後世称賛される華やかな天平文化が形成され広
   く文明が育まれたと推測されます。万葉集には百年以上に亘る期間の約4500首が収め
   られていますが、多くの詠み人不詳歌が含まれており万葉仮名を始めとする文字が広く普
   及していた証と思います。その成果として代表的な古典の万葉集が編纂されたことに敬意
   を感ずる次第です。更に平和な社会の伝承が意図されているなら平城京の政が文化、芸術
   の発展に理解した表れと考察された様にも思われます。

    さて、元号「令和」については弊社で年間に唱える社訓で、平成23年度に聖徳太子の
   憲法「和をもって貴しとなす」から「和」を設定した経緯があり、令=神様のお告げと
   解釈して和の価値観を再認識して社会に一層浸透させたく思います。
    令和の時代に入り、各界での元号に相応しい新たな目標設定により日本に心身ともに豊
   な社会が構築されることを願っています。神社では、氏子各位の心豊かな社会に寄与でき
   れば関係者一同幸甚に存じています。  


               平成31年4月1日 澁川神社 

                「杜の響き」 森下千晴 記

            
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