「杜の響き」
メッセージ 第50章
この程ユネスコ無形文化遺産に既登録の「甑島のトシドン」に加え、新たに全国に伝
承される「なまはげ」等、類似行事を包含した「来訪神:仮装・仮面の神々」が改正登
録されました。従来、地方の話題として報道される程度で単なる田舎の祭りと捉えてい
ましたが、来訪神の概念を導入して今回登録された無形文化遺産には日本列島で派生し
た数々の共通点が認識されます。
外観は、地域独自の面を被り、藁、蓑、棕櫚、蘇鉄を纏い、更には色彩を施すなど非
現実的な異形衣裳で、他生からの神の遣いを暗示した出立を装い、厄災祓い及び招福の
使者として各戸を巡回する素朴な祭りです。
子供には脅しの言葉も交えて諭したり、また親子関係を褒めたり、一方では地域を対
象に豊穣や繁栄を祈願する等、日頃人々が抱く願望を託しています。
催行時期も地域特性に合わせて設定されていますが、数え歳を祝う正月、新春を寿ぐ
節分など各地に適した季節の節目を選び、集落挙って参加する祭りです。地域の絆醸成
に多いに寄与して来たことでしょう。
近年、情報化による社会情勢の変革、事象に対する価値観の相違、少子高齢化に伴う
地方の過疎化の中にあって無形文化遺産の伝承は難しい時代にあると思われます。
ユネスコに無形文化遺産として登録された意義の中には、伝承されている社会的慣習
儀式、祭礼の価値を認め存続を期待する証が含まれていると理解しています。
この他にも美しい日本の各地には、霊峰を始めとする山河などには具現化されてない
八百万の神々が宿り、自然の恵みを人々の心の拠り所として崇められている聖域が多く
あります。先人達より受け継がれた情操を育む処であり末永く護持したく思います。
なお幣神社は、今秋平成の社殿再建十周年を迎え別掲の通り先日多数の崇敬者が集い
記念祭を催行致しました。末筆ながら氏子各位のご理解とご協力の賜物と感謝申し上げ
ると共に伝統行事をユネスコ登録に準じた慣習として継承する次第です。
平成30年12月 1日 記
「杜の響き」 千雅翁
杜の響きへ続く
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