杜の響き  
      
            「杜の響き」
メッセージ 第48章
         

            
ど ん ぐ り 

    秋の訪れと共に境内の樫の木より毎日どんぐりが落下、清掃を繰り返しています。
     然し、晴天の日には、屡々近くの園児が保育者たちに引率され来社、どんぐり拾いに
    歓声を上げています。聞けば軸を刺しコマ遊びをするとのことです。

     子どもの頃、玩具は「めんこ」と「コマ(独楽)」が主流で、特に独楽の回転に軸の
    装填、回転速度、落下高、地盤等の影響を勝手に考察していました。
     やがて、中高生になり初歩の物理教育を受け、独楽の回転に複雑な力学の作用を知り
    自らの単純な頭脳では理解出来ず現在に至っています。
     手先より伝播する角加速度に始まり、回転軸の傾きにジャイロ効果での復元、接地点
    の軸端形状と摩擦力、形状に伴う重心点位置、表面粗度と」空気の粘性、回転停止後に
    微妙な逆転を起す慣性など、自身には程遠い広汎な基礎知識が必須と解り、追求は止ま
    りました。

     宇宙時代の現在、固定点の無い地球の自転と平面上の回転独楽に如何なる相関性が存
    在するのか、そして宇宙力学の中で地球の自転が停止する可能性の有無など浅学の小生
    には想像も出来ず無限の謎に陥ります。
     晩節に至り、現世に与えられた自然環境を神からの授かりものとして甘受して共生す
    る術を求めたく思います。

     350年以上前、ニュートンが発見した万有引力は全ての物体の間に質量の相乗に比
    例、距離の二乗に反比例する力で、この普遍的理論を理解させる為、リンゴが自然落下
    する現象を例示して子供教育に利用しました。
     幼児期に神社境内で拾ったどんぐりが縁で自然科学に興味を抱き、将来学者の誕生に
    至れば望外な結果となります。
     都市化された街並みに残る社叢林で、自然の移ろいを感じ、植物、昆虫などの棲息状
    況を観察する契機になれば、神社の存在意義が倍加され幸甚に思う次第です。 


                 平成30年10月 7日 記
                   「杜の響き」 千雅翁 



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