「杜の響き」メッセージ 第30章


  
                                     
       
    バイロイト祝祭劇場     北欧の神話に思う
        2017-06-12

 昨日ワーグナーの大曲ワルキューレを
 鑑賞する機会に恵まれました。

 ご存知バイロイト音楽祭で四日間延べ
 15時間に亘って、上演される楽劇
 「ニューベルングの指輪」の第二部で
 凡そ五時間の演奏です。
      神々の長と人間とで繰り広げられる黄金の指輪と魔法の頭巾の威力で展開
     する情欲と物欲の物語でもあります。

      北欧に伝わる神話を拠り所にした作品と言われますが、富の証としての黄
     金、自らの子孫継承に起因した性交への執着心、神々と人間との融合による
     魔力等で構成され、短絡的に鑑賞すると尊厳を見出すことも無く、世俗的感
     覚に陥ることとなります。 サンモリッツの氷河で印象付けられた神々しい
     景観を連想しつつ、素朴な神話を素材に創造された楽劇ですが、隆盛を極め
     るドイツ社会の影響で歪曲された芸術にも思えます。
 
      哲学者ニーチェと深い親交を持つ鬼才ワーグナーが、盟友リストと共に歩
     んだ芸術家としての作品です。最終四部「神々の黄昏」に至る大作に包含さ
     れる重厚な思想は小生には到底理解出来ませんが、偉人が神話を偏在的背景
     に映し出し父なるライン川に潜む黄金に纏わる物語として作曲したと理解す
     れば、人間性の共通点が見出されます。


      勿論、ワーグナーが多数のオペラを通して、世に訴えてきた内容全てを理
     解することは能力的にも不可能ですが、ニューベルングの指輪にあっては
     呪われた神々の世界が水と炎で浄化され終焉を迎える道筋を認識すれば反面
     教師として享受出来る場面も多々あります。
      禁断の男女関係、富の略奪に傾注する事無く「仁」を念頭に寛容と奉仕の
     精神を醸成したく思います。

      日本に伝わる神話の代表格古事記にも天皇の継承に伴う権力闘争は見受け
     られますが、国土形成を神の疑似化した物語に始まる処から、風光明媚な
     景色と四季折々の気象を体験しつつ農耕民族として、自然界への崇高な帰属
     意識が浸透していたと推察します。

      日本神道の原点は、地球上で得た天賦の環境を恵と捉え、智慧ある人間と
     して謝恩の精神を培って来たものと、理解しています。

 
                 平成29年6月12日
                    千雅翁 筆


        
 


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