杜の響き 
「杜の響き」メッセージ 第3章





         神宮お白石持行事参加記念寄稿
           

     第六十二回神宮式年遷宮も平成十七年の用材伐採行事山口祭を皮切りに本年秋には
    愈々遷御の運びとなります。造営に伴う種々の神事も順調に進み、この度地元神領民
    の他、全国から参加の特別神領民により、瑞垣内に敷き詰めるお白石奉献の行事が斎
    行されました。当神社からも氏子8名が、白装束に揃いの法被姿で前日の滝原宮参拝、
    浜参宮二見興玉神社での修祓を拝し心身の禊を賜り、この「お白石持行事」に参加致
    しました。

     予め、宮川で清められたお白石を積んだ奉曳車には、約300mの綱が懸けられて
    おり、灼熱の太陽の下2000人近い神領民に加わり木遣唄の先導で奉曵させて戴き
    ました。沿道の人々の声援の中を清々と奉曳する様は御神徳への感謝の念とともに、
    共業共果の心境に導かれた壮麗な行列でした。

     やがて、宇治橋を渡り白布にお白石を賜り、参道を経て竣工した御正殿の垣内に粛
    々と歩み世の永久平和を祈願しつつ奉納させて戴きました。
     新正殿は、樹齢数百年の檜、芽萱で弥生時代を彷彿させる高床式ですが、経験と緻
    密な技の基、現代の木造建築の粋を結集した木の香漂う芸術品に感じられます。社殿
    造営に併せて千数百点に及ぶ神宝装束類の調度品一切を伝統技術と名工の心意気で新
    たに調達された由、技術伝承と共に大和魂の継承に大いに寄与していることと思われ
    ます。

     広大で、瑞瑞しい社業林に御座する神殿は、農耕民族として長きに亘り自然界との
    共生の営みの中で創造伝承された構築物で日本人の魂が顕在化された様に観えます。
     古代文明の栄華を誇る海外遺跡の多くは、太陽乃至大河に対応した石材による堅牢
    な構造物が主体で、現代の土木工事を凌駕する力量に観光客は感動します。方や神宮
    では、天武天皇の御代から遷宮として位置づけ、定期的な新調と技術伝承により永続
    性を確保し、更には受け継いだ人々の心意気にも衰退することなく伝承されています。
     行事を通じて、素晴らしい企画統制と地元神領民の心底からのおもてなしに接し
    日頃より神恩に感謝し、安寧の伝播に意を注いでいる証と捉え、感動いたしました。
    全国から参加のお白石奉曳神領民23万人の皆様も心打たれ、ご神徳に感謝し社会
    の弥栄を念じて、人生の善き思い出として胸に刻みまれたことでしょう。

     澁川神社も天武天皇の御代(676年)に期を得て、旧南島より数百m北の現在地に
    遷宮されたとあり、悠紀斎田と共に同天皇に崇高な縁を拝受賜っており、神社の護持
    の礎として、末長く継承して参ります。

     


     
                       平成25年8月19日 掲載
                            「杜の響き」 主幹 千雅翁




杜の響きへ続く    神社INDEX