杜の響き 
「杜の


                  特別寄稿
  
       ある氏子総代を偲んで
 
       
先日、今春任期を全うした一人の氏子総代が桜花を道連れに他界しました。
       彼は古希を経た人物とは言え、渓流に設置された水車の如く常に思考し、創
       造性の豊かな人物でした。
 
        三年前の新任に当たり、前年に自ら奉納した玉垣のある敷地境界を計測し
       残余地から本数を割り出し、一般公募の末、任期中に充足完成させました。
        消失再建されて10年足らずの神社では末整備な箇所も多く、又、 運営
       指針とすべき書類もなく、諸先輩の記憶を参考に順次改良する状況にありま
       す。

       遺品の中に神社関係の8冊のファイルがあり、祭事の準備、祭礼の典儀、
      供物の配置、人員配置、斎田の管理状況は元より、不足の神具の設計図、境内
      案内掲示、願届書類等まであり、而も提案前の思考検討内容が添え書きされて
      いました。

       彼の献身的な奉仕活動には屡々胸を打つ場面が想起されます。末期癌に侵
      され酸素ボンベを曳いて活動する姿を見て気遣う仲間には「自らの意思によ
      る行動が一番楽なのでやらせてください」と明るく振舞うのが常でした。

       死の直前入院先を見舞った折、新たに設けた「参与」の役職を快諾され退
      院後の奉仕活動を誓い、病床で構想したメモ書きと共に持参した新年度の名
      簿を枕元に置く姿が印象に残っています。

       由緒ある弊氏神神社では、遭遇した様々な事象に多くの先人達による奉仕
      活動が寄与して今日まで護持継承されたことと、推察されます。

       72年の人生で磨かれた彼の精神から醸し出された数々の「任」に満ちた
      活動を鏡に関係者一同「徳は弧ならず、必ず隣あり」を実践する環境にあり
      ます。新たな氏子総代で更なる発展を遂げ、彼の描く天空の座標軸に表示出
      来ればと、夢見て運営に携わります。
       三年間に渡り献身的なご奉仕に関係者一同、感謝申し上げます。
                
     

                平成29年 4月 20日
                 澁川神社 責任役員 森下千晴
      



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