杜の響き 
「杜の響き」メッセージ 第1章


         
            京都伏見稲荷の歴史と文化遺産を訪ねて

             京都伏見稲荷参詣・実施日  平成23年10月18日
                      調査報告 平成23年10月19日 

     

  趣 旨
  澁川神社境内に鎮座する澁川稲荷社は、平成20年神社本殿再建に併せ祠の新装を実施したが
  近年の例祭催行の記録も無く、由来不明の状況にある。最近になり山田郡の文献により、明治
  11年6月1日旧南島より数丁北の現在地に遷座した旨の記述が判明したが、更にそれ以前の
  経緯について調査の要望があり、有志で稲荷神社の全体像把握と護持の態勢等、今後の参考事
  項修得のため、稲荷神社の総本宮に赴いた。
              
  調査概要
  (1)祭 神
     中央座の宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)を主祭神とし
     最南座四大神(しのおおかみ)
     南座大宮能売大神(おおみやのおおかみ)
     北座佐田彦大神(さだひこのおおかみ)
     最北座田中大神(たなかのおおかみ)が、鎮座、農業の神として、広大な神徳を礎に
     五穀豊穣・商売繁盛・交通安全等、「衣・食・住」の大祖として、社会総てにご利益が
     あるとされる。

  (2)歴 史
     和銅4年(711年)2月7日、伊侶巨秦公(いろこのはたのきみ)により、稲荷山の
     三つの峰に、それぞれの神を創祀。
     但し、澁川神社と同様、日本書紀の記述分約200年の脈路が不明であるが、今年は御
     鎮座1300年に当たり奉祝の各種記念事業が催行されている。

  (3)境 内
     「東山36峰」の最南の稲荷山87万平方メートルの敷地に、崇敬者に因る奉納祠が、
     約1万祀ってある。大半が石造で傾斜地に処狭しと設置されている。参道は千本鳥居と
     称して膨大な数(約1万基)の鳥居で隧道を形成しているが、奉納日は、平成年代と比
     較的新しく、随所で朽ちた鳥居の更新工事が施工されている。
     鳥居は、願いが「通る。通った。」お礼の意味から江戸時代以降盛んに奉納される様に
     なった。

  (4)末 社
     稲荷大社の霊神を祀る末社は全国に3~4万あり、個人的に奉る神祠を含めると数10
     万に及ぶ。遠方からの問い合わせも少なからずあるが、澁川稲荷社の経緯も含め歴史も
     古く全体像は掌握出来てない。
     近年新たに祀られた社は御神璽(小式、中式、大式、本式、小斎祀式、中斎祀式、大斎
     祀式、本斎祀式、本大斎祀式)を奉って戴いたり、講員組織(後述)で繋がりを確保し
     つつある。

  (5)祭礼種類
     他の神社と同様、月次祭を始めとし大差はないが、主な祭礼を挙げれば次の通り。
    ・歳旦祭  1月 1日:年の始めを寿ぎ国家の安泰、五穀豊穣、家業繁栄が祈願される。
    ・大山祭  1月 5日:注連縄を張る神事。
    ・奉射祭  1月12日:民間の破魔矢と同じで邪気陰気を祓い陽気を迎える。
    ・初午大祭 2月 3日:和銅四年二月初午の日に稲荷山に鎮座、その謂れに因んで大祭が
                行われる。
    ・産業祭  4月 8日:凡ゆる産業の守護神として産業の発展と国力の増強を祈願する。
    ・稲荷祭(神幸4月22~還幸5月3日:御神璽を奉遷した神輿車を巡幸する。
    ・大祓式  6月30日、12月31日:日常の罪穢れを祓い清める。
    ・本宮祭  7月22日:稲荷神社の分霊を奉る全国の信仰者が、神恩に感謝する祭、
                宵祭りには万燈神事が行われる。
    ・講員大祭 10月6・7日:神社に携わる全国の講員の安全隆昌を願って神人和楽の境地
                  を醸し出す。ぜんざい接待で持成す。
    ※ 講員は、奉賛組織の会員で講費として2~7千円/年で資格を得て、各祭典に参列、
      講習会参加等の特典に浴する。
    ・火焚祭(ひたきまつり)11月8日:祭礼の後全国の崇敬者から奉納された数十万本の
                      火焚木を焚き上げ 罪業消滅万福招来の祈願を行う。
  (6)祭礼
     祭礼次第一般神社と相違なく、われわれ一同の昇殿参拝にも祭司及び、案内宮司の2人
     の神官により接遇され、格式を感じた。

  (7)奉楽祭礼
     奉楽祭礼には雅楽、能、神楽舞など奉納される。能では、縁ある「小鍛冶」がよく奉納
     される。

  (8)まとめ(筆者雑感)
   年間1000万人の参詣者が訪れると言われるが、歴史的な由諸と雄大な境内から納得させら
   れる。社務所受付人も5~6人居り、坐して丁寧に接客、神社の格式に関係なく参詣者を重ん
   じる姿勢を学びたい。 八坂神社も詣でたが、立地条件の異なる両神社が、何れも護持継承に
   熱意が強く、神社を運営する私たち総代始め関係者にも不断の努力と研鑽が重要と痛感した。
   澁川神社が地域の皆様に親しまれ更には誇りを感じて、真に絆醸成の拠点として位置付けられ
   るには、何が必須か高配の上、携わっていきたい。


                           平成23年10月19日 掲載
                          「杜の響き」 主幹 千雅翁




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